融資審査を通過する「事業計画書」の考え方|金融機関を納得させる数値と返済計画の連携

クリニック開業における資金調達の成否は、「事業計画書」のクオリティで決まると言っても過言ではありません。金融機関は、先生の素晴らしい医療技術や情熱だけでなく、経営者としての「事業を計画通りに遂行し、確実に返済してくれるか」という信頼性を見ています。
では、金融機関を納得させ、信頼を勝ち取る事業計画書とは、具体的にどのようなものでしょうか。本記事では、その作成プロセスと、税理士ならではの重要なポイントを解説します。
ステップ1:計画の前に「事業方針」を固める
事業計画の作成とは、先生の「理想の医療」という事業方針を「具体的な数値」に翻訳する作業です。そのため、数字を作り始める前に、まず事業の核となる方針を固める必要があります。
- 診療コンセプト: どの地域の、どのような患者様に対し、どんな医療を提供したいか。
- 自院の強み: 周辺の競合クリニックと、どう差別化を図るか。
- 経営理念: スタッフと共有したい、クリニックの普遍的な価値観は何か。
これらの事業方針が明確であるほど、後の数値計画に説得力が生まれます。
ステップ2:「利益(PL)」と「現金(キャッシュフロー)」2つの側面で数値を練る
金融機関が特に注目するのが、損益計算書(PL)とキャッシュフロー計算書です。この2つを整合性をもって作成することが極めて重要です。
- 損益計算書(PL): クリニックの「儲ける力(収益性)」を示すものです。診療収入から経費を差し引いて、どれだけの利益が残るかを予測します。
- キャッシュフロー計算書(CF): クリニックの「支払い能力(安全性)」を示すものです。利益が出ていても、借入金の返済や高額な医療機器の購入で手元の現金が尽きてしまえば、経営は立ち行かなくなります(黒字倒産)。この「現金の流れ」を正確に予測するのがキャッシュフロー計算書です。
私たちは、PL上の利益計画だけでなく、借入金の返済まで含めたキャッシュフロー計画を緻密に作成し、クリニックの安全性を客観的な数値で証明します。
ステップ3:「資金の余力」を基に、実現可能な返済計画を立てる
事業計画書で算出したキャッシュフロー予測を基に、「ゆとりを持った返済」ができる返済計画を立てます。金融機関は、計画に無理がないか、不測の事態(例:開業当初の患者数が想定を下回るなど)にも耐えうるだけの資金的な余力が計画に織り込まれているかを厳しくチェックします。
事業計画と返済計画を連携させ、「これだけの利益とキャッシュフローが見込めるので、この返済額は全く問題ありません」と自信を持って説明できることが、信頼獲得の鍵となります。
ステップ4:事業計画は「作ってから」が本番
事業計画書は、融資審査を通過したら終わり、ではありません。むしろ、開業してからが本番です。
開業後は、毎月「計画(予算)」と「実績」を対比し、なぜ計画通りに進んでいるのか(あるいは、進んでいないのか)を分析する「予実管理」を行うことが、経営を安定させる上で不可欠です。この予実管理を通じて、課題を早期に発見し、次の一手を打つことで、事業計画は初めて「生きた経営の羅針盤」となります。
まとめ:税理士と作る「未来を切り拓く」事業計画
融資を成功させ、かつ開業後の経営を安定させる事業計画書とは、
- 明確な事業方針に基づいていること
- 利益と現金の流れが、整合性をもって緻密に予測されていること
- 実現可能な返済計画と連携していること
- 開業後の「予実管理」に活用できること
この4つの要素を満たすものです。
私たち西原会計事務所は、税務・会計のプロフェッショナルとして、金融機関を納得させる事業計画書の作成を支援するだけでなく、開業後の予実管理まで一貫して伴走し、先生の事業の成長をサポートすることを得意としています。
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そんな先生は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。共に未来を切り拓く事業計画の作成を、全力でお手伝いいたします。