この記事では、クリニック開業後に活用できる節税方法について説明していきます。開業医固有ではない節税節税には様々な種類があります。その方法によりメリット、デメリットがそれぞれ存在します。医師向けと紹介されているものもいくつかありますが、以下の方法による節税は、医師固有のものではありませんので、別の機会にご説明したいと思います。・不動産投資・iDeCo・小規模企業共済・経営セーフティ共済・ふるさと納税・家族への所得分散・減価償却資産の購入消費税の課税事業者になるかどうか2年前の「課税売上高」が1,000万円を超えると、消費税の「課税事業者」となり、納税義務が発生します。(参照)ただし、社会保険診療については、「非課税売上」とされているため、「課税売上高」に含まれません。(9) 社会保険医療の給付等健康保険法、国民健康保険法などによる医療、労災保険、自賠責保険の対象となる医療など参照そのため、自由診療・健康診断等が少ない場合には、「課税事業者」とならなくても済むケースがあります。しかし、「免税事業者」の場合は、消費税の納税義務もない反面、還付を受けることもできません。たとえば、開業初年度において支出が多い場合には、消費税が還付となる可能性もありますが、「免税事業者」の場合には、その還付を受けることができません。さらにややこしいのが、「免税事業者」のままで居ても良い期間に、あえて「課税事業者」を選択した場合には、一定期間「免税事業者」に戻れません。このようなルールは把握してシミュレーションすることで、消費税の節税につながることがあります。医療法人化による節税個人事業主から法人成りすることによって、節税を図ることが可能です。一般的には、所得税・個人住民税の税率(最高55%)よりも法人税率の方が低いため、その方が節税になる、という説明がなされます。たしかに、法人の方が税率が低いのは事実ですが、それは利益を個人に移転せずに、法人内に留めることが前提になっています。実際には、医療法人に利益を留めておくのではなく、理事報酬として医師本人に支払うことになりますが、理事報酬には所得税が課されます。そのため、理事報酬を設定しない場合の法人税率というのは、節税になるかどうかという観点では本質的なところではないです。医療法人化によって可能になるのは、他の理事(ご家族など)への所得の分散や、退職金の設定、出張旅費規程の整備などによる効果の方が、法人成りするからこそ実現できる部分になります。医療法人の理事は、代表理事は医師である必要があるものの、その他の理事は医師である必要はありません。これらの理事に理事報酬を設定することで、所得税率を低くした状態で資産を渡すことが可能になります。医療法人への規制や、置かれた状況によってシミュレーションを行い実行に移すかどうか決めていくことになります。MS法人の設立による節税MS法人の設立による税務上のメリットは、主に以下の点に集約されるでしょう。・法人税軽減税率の適用(年800万円以下の部分:15%)・交際費枠の増加・所得分散(医療法人化のメリットと同じ)また、それ以外の点では、事業の幅を拡大することができる、という点が挙げられます。医療法人では、非営利法人としての位置づけになりますので、行える事業が限られています。 ※ 医療法の条文や、厚労省通知をここに入れるそのため、これらの制約に抵触する事業は医療法人ではできません。しかし、MS法人となる株式会社や合同会社にはこのような規制や及びませんので、事業展開という意味では自由度が格段に増します。MS法人となる株式会社等の役員については特に大きな制約はありません。一方、医療法人の理事については、利害関係を有する者の就任ができません。医療法人とMS法人との間で取引関係になることは明らかですので、医療法人とMS法人の役員は兼任ができないということになります。節税・事業活動の自由度合いといったメリットと、これらの制約を克服しなければいけないというデメリットを比較衡量して、実行するかどうか検討することになります。おわりに医師ならではの節税についてご説明いたしました。どのような形で開業したのか、開業時の借入金はどの程度残っているのか、ご家族の状況は相続対策へのご意向はどうか、など、変数は多岐に及びます。西原会計事務所では、こうした医師のみなさまのご状況に応じて最適なプランをご提案いたしますので、是非お気軽にご相談いただければと考えております。