1.診療所開設の時に届け出が必要な書類とその届け出先診療所を開設する際には、様々な書類の届け出が必要となります。以下に主なものとその届け出先を列挙します。2.保健所への提出書類診療所開設届診療用X線装置装備届け麻酔管理者・施設者免許申請書結核予防法指定医療機関指定申請書診療所使用許可申請書(有床の場合)3.厚生局への提出書類保険医療機関指定申請書(ただし、自由診療のみを行うクリニックに限り、この提出は不要です)保険医登録申請書4.税務署への提出書類個人事業の開業届出書青色事業専従者給与に関する届出書源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書青色申告承認申請書5.都道府県税事務所への提出書類個人事業税の事業開始等申告書6.労働基準監督署への提出書類労働保険の保険関係成立届概算保険料申告書7.労働局への提出書類労災保険指定医療機関指定申請書8.医師会への提出書類生活保護法指定医療機関指定申請書9.公共職業安定所への提出書類雇用保険適用事務所設置届雇用保険資格取得届10.医師国保(医師国民健康保険組合)への提出書類加入申込書10.年金事務所への提出書類新規適用届資格取得届11.福祉保健局への提出書類生活保護法 指定医療機関 指定申請書12.消防署への提出書類防火対象物使用開始届出書これらの書類は、診療所の開設に必要な手続きの一部であり、診療科目や診療内容によっては、上記以外にも必要な手続きがあります。また、これらの手続きは時間がかかることもありますので、開業の計画を立てる際には十分な時間を確保することが重要です。2. 保険所への届け出保健所に提出する資料についてここでは取り扱います。保健所は原則都道府県ごとに管轄が決まっていますが、人口の多い市区町村については、市区町村ごとに管轄が決まっていることもあります。手続きを行う際は、まずどこの保健所に届け出るか確認しましょう。(確認する)東京都の場合、23区はそれぞれ特別区ごとに保健所がありますが、それ以外の市町村では、複数の市町村で1つの保健所があり、それを東京都が管轄しています。「開業予定の自治体名 保健所」で検索し、管轄の保健所を調べることをおすすめしています。2-1. 事前相談保健所の事前相談は、医療クリニック開業の際に非常に重要なプロセスです。この相談を通じて、開業予定のクリニックが法的な要件を満たしているかどうかを確認し、必要な許可や届け出についての指導を受けることができます。以下に、保健所の事前相談についての解説を記載します。保健所の事前相談は、診療所開設に必要な各種許可や届け出に関する正確な情報を得るために行います。また、診療所の設計や設備が衛生基準や法規制に適合しているかを確認し、問題がある場合はその解決策を相談する機会を提供します。相談内容の例・診療所の設計図に関する確認・衛生管理や感染症対策に関する指導・医療廃棄物の処理方法についての相談・診療所で使用する医療機器の安全基準に関する確認相談を行うタイミング事前相談は、診療所の設計や内装工事を行う前に行うことが望ましいです。これにより、工事に着手する前に必要な改善点を把握し、計画に反映させることができます。具体的な時期としては、少なくとも開業予定日の数か月前には相談を行うことが望ましいです。相談の流れ・保健所に連絡を取り、事前相談の予約をします。・相談日に診療所の図面や関連書類を持参し、保健所の担当者と面談します。・担当者からの指導やアドバイスを受け、必要に応じて設計図や計画を修正します。・すべての要件を満たした後、正式な許可申請を行います。注意点保健所によっては、事前相談の窓口が異なる場合がありますので、開業予定地の管轄の保健所に確認することが重要です。また、相談内容によっては複数回の面談が必要になることもありますので、余裕を持ったスケジュールで相談を行うことをおすすめします。2-2. クリニックを開業するときは必ず提出する書類ここでは、どういう状況でもクリニックを開業する場合に必ず提出する資料について説明していきます。診療所開設届を提出します。医師と歯科医でフォーマットが異なることが多いので、間違えないで、医師用のものを提出しましょう。保健所によって様式が異なるので、管轄の保健所のホームページで入手します。ここでは、東京都大田区を例に説明します。大田区では、このページから様式が入手できます。その際、あわせて敷地・建物の平面図、医師の免許証・職歴書、臨床研修棟終了登録証、土地・建物の登記事項証明書(賃貸の場合は、賃貸借契約書)等の提示が必要になります。管轄の保健所のホームページをよくご覧になってください。場合によっては、事前相談時に案内してもらうこともありますので、資料は取っておくようにしましょう。2-3. 診療科目などの状況によって必要になる書類診療メニューによって必要になる届け出について説明します。エックス線を行ってレントゲン検査を行う場合に必要になる「診療用エックス線装置備付届」、結核を公費負担で診療する場合に必要になる「結核指定医療機関指定申請書」、院内薬局で、医療用麻薬を処方する場合に必要になる「麻薬小売業者免許申請書」などがあげられます。それぞれの書類ごとに、必要な添付資料が異なります。事前に保健所によく確認してから手続きを行いましょう。3. 厚生局への届け出厚生局は、厚生労働省の管轄にあり、原則都道府県ごとに事務所があります。東京都の場合は、関東信越厚生局 東京事務所が手続き先になります。保健所に書類を提出するだけでは、まだ自由診療しか行えません。厚生局に届け出を行うことで、保険診療が可能になったり、診療報酬の加算を認定されたりします。3-1. 保険診療に必要な書類保険診療を行うためには、保険医療機関指定申請書と保険医登録申請書が必要になります。添付資料として、保健所の発行した使用許可証保険医の氏名及び保険医の登録の記号及び番号並びに担当診療科名を記載した書類それ以外の医師及び薬剤師のそれぞれの数を記載した書類オンライン資格確認の導入計画書または、オンライン資格確認導入の猶予届出書(オンライン資格確認の経過措置に該当する場合)の提出が必要になります。開業医の先生のみで診療を行う予定の場合は、健康保険法69条により、保険医療機関指定申請書については届け出義務が免除されています。3-2. 施設基準・診療報酬の加算に必要な書類診療報酬の加算をとるためには、施設基準の届け出が必要になります。どの診療報酬の加算項目をとるかについては、事前にコンサルタントに相談してから決めましょう。ほかの医院クリニックを参考にするのもよいでしょう。他のクリニックの状況については、各クリニックのホームページから状況を推測することもできますが、厚生局のホームページにとっている加算項目が公開されているので、そちらを参考にするのがおすすめです。開業日からの診療について加算が取れるように期日を確認しながら手続きします。詳細は厚生局のホームページをご覧ください。4. 税務署への届け出開業時には、「開業届」、「青色申告承認申請書」、「給与支払事務所の開設届」、「納期の特例承認申請書」、「青色事業専従者給与に関する届け出書」を提出しましょう。■開業届個人事業主が事業を始める際に税務署に提出する書類です。開業届を提出することで、事業用の銀行口座の開設が可能になります。■青色申告承認申請書青色申告の承認申請書を提出することで、所得税の計算に青色申告特別控除(65万円)を適用できます。ほかにも欠損金を繰り越せる、家族への給与を経費にできる(青色専従者給与)などのメリットが享受できます。■給与支払事務所の開設届従業員を雇用する際に、給与支払事務所の開設届を提出します。■納期の特例承認申請書所得税の納税期限を延長するための申請です。納期の特例は、従業員10名未満の場合に利用でき、通常毎月納付が必要な源泉所得税が、7月と1月の年2回の納付でよくなります。■青色事業専従者給与に関する届け出書家族・親族への給与を経費にする場合に提出します。この書類を提出しないと、家族・親類への給与を経費にできず、事業に支出したのに、認められないのでご注意ください。5. 都道府県税事務所への届け出都道府県事務所に「事業開始(廃止)等申告書」を提出します。個人でも事業税の課税対象になります。6. 労働基準監督署への届け出従業員を雇う場合には必ず手続きが必要になります。雇用保険の加入対象者がいなくても手続きを行います。「労働保険保険関係成立届」と「労働保険概算保険料申告書」の提出を行います。詳細は社労士に確認をとってください。2つの様式は複写式の用紙になるので、労働基準監督署似て入手する必要があります。弊所では提携の社労士がいますので、手続きの際にご紹介・ご相談が可能です。ご興味ある場合、是非お問い合わせください。なお、労働保険保険関係成立届の控えをもって次のハローワークへの手続きに進みます。7. 労働局への届け出労災保険指定医療機関になるためには、都道府県労働局に書類を提出し、都道府県労働局長による指定を受ける必要があります。医師会に加入している場合とそうでない場合で、手続きが異なることがあります。医師会に加入している場合、医師会の推薦をもらえることで手続きを楽にすることができます。詳しくは所属予定の医師会のお問い合わせください。(東京都医師会の該当ページはこちら)・労災保険指定医療機関指定申請書・病院(診療所)施設等概要書・開設許可証・労災指定病院等登録(変更)報告書・知事届出事項に係る届出書の写・その他労災診療費の算定に際して必要な事項の記載された書類(地方厚生局へ届け出た施設基準に関する受理通知の写し)を提出します。書類によっては複写式のため、取り寄せが必要になることもあります。社労士の専門分野ですので、お困りのことがございましたら、労働局か社労士に相談しましょう。弊所では社労士の紹介が可能です。是非お気軽にお問い合わせください。8. 医師会への届け出医師会に加入する場合は手続きが必要です。医師国保に加入する場合や、労災保険指定医療機関の推薦をもらう場合などは加入する必要があります。また、母体保護法の指定医の認定を受けるには地域の医師会に申請を行います。母体保護法指定医師指定申請書およびその他添付書類を提出します。詳細は各医師会のホームページをご覧ください。(東京都医師会はこちら)9. ハローワークへの届け出雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届の提出を行います。その際、添付書類として、労働保険保険関係成立届の事業主控えを提出します。10. 協会けんぽ・医師国保への届け出健康保険の加入手続きを行います。医師国保の方が協会けんぽに比べて保険料負担が少なくなります。詳細は別記事をご覧ください。医師国保に加入する場合は、医師会に事前に加入しておく必要があります。ここでは東京都医師国民健康保険組合を前提に説明していきます。■医師国保への加入方法<医師本人が加入するとき>① 加入申込書② 個人番号(マイナンバー)の記載のある世帯全員が記載された住民票...3か月以内に発行された、個人番号や続柄等全てが記載されたものが必要になります。③ 預金口座振替依頼書...指定金融機関(みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、きらぼし銀行、東日本銀行、横浜銀行、三井住友信託銀行、多摩信用金庫)ではないと、利用できません。④ 住民票上同一世帯で、医師国保に加入しない方の保険証のコピー⑤ 個人番号(マイナンバー)確認書類のコピー...個人番号カード(裏面)、通知カード等※ただし、住民票に個人番号が記載されている場合は必要ありません。⑥ 身元確認書類のコピー...個人番号カード(表面)、運転免許証、パスポート等⑦ 医療・福祉の事業または業務に従事していることの証明書下記ア~エのいずれか1つア 診療所開設届のコピー(保健所)イ 診療報酬(総括)請求書のコピー(点数部分は不要)ウ 保険医療機関指定通知書のコピー(関東信越厚生局)エ 診療所開設許可申請書のコピー(保健所)<家族が加入するとき>① 加入申込書② 個人番号(マイナンバー)の記載のある世帯全員が記載された住民票3か月以内に発行された、個人番号や続柄等全て記載のもの③ 資格喪失証明書※社会保険等を資格喪失している場合は必要です。<従業員が加入するとき>① 加入申込書② 個人番号(マイナンバー)の記載のある世帯全員が記載された住民票3か月以内に発行された、個人番号や続柄等全て記載のもの③ 住民票上同一世帯で、医師国保に加入しない方の保険証のコピー④ 雇用されている証明書厚生年金適用事業所はア、その他の事業所はイ~エのいずれか1つア 健康保険被保険者適用除外承認申請書イ 就労証明書(加入申込書の裏面に記入してください。)ウ 雇用契約書のコピーエ 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書のコピー■協会けんぽの加入方法協会けんぽへの提出書類新規適用届と資格取得届を提出します。医療法人として加入する場合は、登記簿謄本を添付する必要があります。また、常時5人以上使用する個人事業所として強制適用事業所になった場合は、事業主の世帯全員の住民票の提出が必要になります。11. 福祉保健局への届け出生活保護法の指定医療機関の認定を受ける場合は、福祉事務所に「生活保護法 指定医療機関指定申請書」を提出します。なお、令和5年より保険医療機関と指定医療機関の申請等を同時に行う場合は、厚生局に保険医療機関の申請手続きを行うと、都道府県に転送されるように制度が変更になりました。そのため後から生活保護法の指定医療機関の認定を受ける場合以外は、手続き不要です。12. 消防署への届け出一定の要件を満たす場合は、クリニックに防火管理者を置いて、スプリンクラー、消火器など適切な消防器具を設置する必要があります。設置後、消防署の確認が必要になることがあります。詳しくは設計事務所や、ビルのオーナーに確認してみましょう。まとめここまで開業期に提出する書類についてまとめてきました。開業届にとどまらず、各役所に書類の提出が必要になります。また、期限に間に合わない場合は、診療の開始時期が遅れたり、もらえるはずの診療報酬がもらえなかったりすることがあります。計画的に手続きを行っていきましょう。手続きは専門家に依頼することがおすすめです。弊所では、提携専門家とともに、ワンストップで手続きのフォローが可能です。是非ご相談ください。