【開業医編】顧問税理士の選び方

開業医として医院経営に取り組まれる皆様にとって、信頼できる顧問税理士との出会いは成功への重要な鍵といえるでしょう。税務処理はもちろん、経営面でのサポートから将来の事業承継まで、税理士は開業医の良きパートナーとして長期にわたり関わる存在です。
しかし、数多くの税理士の中から、開業医特有の税務論点に精通し、医院経営をトータルで支援してくれる専門家を見つけることは容易ではありません。一般的な税理士と医療特化型の税理士では、提供できるサービスの質と範囲に大きな違いがあります。
本コラムでは、開業医の皆様が最適な顧問税理士を選ぶための7つの重要なポイントについて詳しく解説いたします。適切な税理士選びにより、本業である医療に専念できる環境を整え、経営の安定化を図ることができるでしょう。
1. 開業医固有の税務論点に詳しい
開業医が顧問税理士を選ぶ際に最も重要なポイントは、医療業界特有の税務論点に精通していることです。一般企業とは異なる医療業界独自の制度や優遇措置について、専門知識を持った税理士でなければ適切なアドバイスを提供できません。
概算経費制度
開業医にとって最も有利な税制優遇措置の一つが、「租税特別措置法第26条」による概算経費の適用です。個人経営のクリニックで、年間総収入金額が7,000万円以下かつ社会保険診療報酬が5,000万円以下の場合に適用可能です。
この制度では、実際の経費の代わりに概算経費率を用いることができ、社会保険診療報酬の金額に応じて以下の割合を必要経費として計上できます。
- 2,500万円以下:社会保険診療報酬の72%
- 2,500万円超~3,000万円以下:社会保険診療報酬の70%+50万円
- 3,000万円超~4,000万円以下:社会保険診療報酬の62%+290万円
- 4,000万円超~5,000万円以下:社会保険診療報酬の57%+490万円
この制度により、実際にかかった経費以上の経費計上が可能となり、節税効果が期待できます。
医療機器の特別償却制度
開業医にとって大きな節税効果が期待できるのが、医療機器の特別償却制度です。この制度には複数の種類があり、それぞれ異なる要件と償却割合が設定されています。
高額医療用機器の特別償却制度では、取得価額が500万円以上で、高度な医療の提供に資するもの、または医薬品医療機器等法の指定を受けて2年以内の医療機器が対象となり、取得価額の12%を特別償却できます(個人:租税特別措置法第12条の2第1項、法人:租税特別措置法第45条の2第1項)。
医師等の労働時間短縮に資する機器等の特別償却制度では、取得価額が30万円以上で、医師等勤務時間短縮計画に基づき取得した機器について、取得価額の15%を特別償却することができます(個人:租税特別措置法第12条の2第2項、租税特別措置法第45条の2第2項)。
これらの制度を適切に活用することで、機器導入初年度の税負担を大幅に軽減し、キャッシュフローの改善を図ることが可能です。
経費計上の最適化
開業医の経費計上には、一般的な事業とは異なる特殊な論点があります。医療機器や医薬品の購入、学会参加費、専門書籍代、研修費用など、医療業務に直接関連する支出を適切に経費として計上することが重要です。特に、診療に必要な接待交際費については、個人医院の場合は法人と異なり上限がないため、税務調査時に私的な支出と判断されないよう、領収書への目的や相手先の記載が必要です。
また、在庫管理についても注意が必要です。医薬品や医療材料の期末在庫を実際と異なる金額で計上すると利益操作となる可能性があり、税務調査時には12月31日時点の正確な在庫計上が求められます。
家族給与・所得分散
個人開業医においては、「青色事業専従者給与」を活用することで効果的な所得分散が可能です。家族がクリニックの業務を手伝っている場合、年240万円程度の給与を支払うことで、その金額を事業所得から経費として控除でき、開業医本人の課税所得を減らすことができます(所得税法第57条第1項)。
ただし、実態のある労働に対する適正な報酬でなければならず、事前に税務署への届出が必要です。また、専従者は業務に「専ら」「従事」している必要があり、原則として6か月以上の従事期間の縛りがあります(所得税法施行令第165条第1項)。
福利厚生・保険活用と共済加入
開業医が利用できる福利厚生制度や保険の活用についても、専門知識が必要です。小規模企業共済では、月額1,000円から7万円まで拠出可能で、掛金の全額が所得控除となります。一括受取時は退職所得扱い、分割受取時は公的年金等の雑所得扱いとなり、税制優遇を享受できます。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)では、月額5,000円から200,000円まで拠出でき、掛金の全額を必要経費に算入できます。年間上限240万円の経費計上により、大きな節税効果が期待できます。
開業医向けの共済制度としては、東京保険医協会が提供する保険医年金、グループ生命保険、休業保障共済保険、医師賠償責任保険などがあり、これらを適切に活用することで保障の確保と節税の両立が図れます。
2. 金融機関とのコミュニケーションに強い
医院経営の発展や設備投資、資金調達の際には、金融機関との良好な関係構築が欠かせません。顧問税理士が金融機関との折衝や交渉について必要な助言をできるかどうかは、開業医にとって大きな安心材料となります。
資金調達サポート
新規開業時の設備投資、増患対策のための分院開設、最新医療機器導入のための融資など、医院の成長フェーズに合わせて必要な資金調達は多岐にわたります。適切な資金調達計画を策定し、融資申込書の作成から面談時のプレゼンテーションまでサポートできる税理士であれば、金融機関からの信頼を獲得しやすくなります。
決算書・事業計画書の作成支援
金融機関は、融資審査時に提出される決算書や事業計画書の正確性・説得力を重視します。税理士が作成する決算書は、会計・税務の専門家の視点から公正かつ詳細にまとめられているため、金融機関に安心感を与えられます。さらに、「書面添付制度」を活用し、申告書に添付する意見書によって決算書の作成過程が第三者的に明示されていれば、信頼性がさらに高まり、審査通過率の向上に大きく寄与します。また、事業計画書の作成においても、収益予測やキャッシュフロー推計、返済計画を明確に示すことで、審査通過率を高めることが可能です。
継続的な資金調達計画の見直し
医院経営は外部環境や業績変動の影響を受けやすいため、融資後も定期的に資金繰りを見直し、必要に応じて追加融資や借換えを検討する必要があります。継続的に金融機関とのコミュニケーションを図り、適切なタイミングで支援を受けられる税理士が顧問であれば、資金調達リスクの低減につながります。
3. 医療法人化に詳しい
開業医の事業が軌道に乗り、一定の所得水準に達した際には、医療法人化が重要な選択肢となります。医療法人化には多くのメリットがある一方で、複雑な手続きや運営上の制約もあるため、この分野に精通した税理士のサポートが不可欠です。
医療法人化のメリット
医療法人化の最大のメリットは税負担の軽減です。個人医院の場合、所得税・住民税は最高で55%の累進税率が適用されますが、医療法人の場合は年間800万円までの所得について法人税は15%、800万円を超える部分について23.2%の税率が適用されます。
また、事業拡大の可能性も大きなメリットです。医療法人化により分院開設が可能となり、事業規模の拡大を図ることができます。さらに、社会的信用の向上により、金融機関からの資金調達が容易になる場合があります。
事業承継の円滑化も重要な利点です。個人医院の場合、院長の相続時に医療機器や不動産などの資産に相続税が課される可能性がありますが、医療法人化により事業承継を円滑に進められる可能性があります。
医療法人化のデメリット
一方で、医療法人化には注意すべきデメリットもあります。設立手続きの煩雑さが最大の課題で、事前審査の申込から開設まで6~9か月という長期間を要し、年に2回しか申請できない自治体が多いのが現状です。
運営コストの増加も考慮が必要です。医療法人には理事3名以上・監事1名以上の設置等の役員要件が課され、管理者を理事に加える義務など、ガバナンス体制整備が求められます。毎年の登記や、社員総会議事録、理事会議事録、定款や内部規定の定期的な更新などが必要となります。
事業報告書の提出・開示義務が発生する点もデメリットとして挙げられます。会計年度終了後3月以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、監事監査報告書等を都道府県知事に提出しなければならず(医療法第51条)、提出を受けたこれらの書類は、請求があった者に対して都道府県知事が閲覧に供することになります(医療法第52条第2項)。さらに、令和5年8月以降に決算期を迎える医療法人は、病院・診療所ごとの経営情報(収益・費用、人員状況等)を併せて報告する義務も新設されました(医療法第69条の2第2項)。
また、社会保険の強制適用により、従業員1人でも雇用していれば社会保険料の負担が発生します。個人医院で医師国保に加入していた場合と比較して、保険料負担が増加する可能性があります。
医療法人化の手続きと要件
医療法人化の手続きには、以下のステップが必要です。
- 設立事前登録と説明会参加
- 定款作成
- 設立総会開催
- 設立認可申請書の作成・提出・審査
- 設立認可書の交付
- 法人設立登記
- 各種届出(税務署、都道府県税事務所等)
- 保険医療機関指定申請
設立要件としては、医療行為ができる設備や器具の保有、年間支出予算の2か月分程度の運転資金確保などが求められます。
4. MS法人設立に詳しい
MS法人(メディカル・サービス法人)の設立は、開業医にとって効果的な節税手段の一つですが、適切な設立と運営には専門知識が必要です。MS法人について詳しい税理士を選ぶことで、最適な活用方法を見出せます。
MS法人設立のメリット
家族への所得分散は重要な利点です。家族をMS法人の役員にすることで役員報酬を支払い、さらなる所得分散を図ることができます。個人開業医の事業専従者給与と比較して、MS法人の方が制約が少なく、より柔軟な所得分散が可能です。
事業拡大の基盤構築として、MS法人を通じて医療関連事業の多角化を図ることが可能です。医療機器のリース業務や医薬品販売など、新たな収益源の確保につながります。
MS法人設立時の注意点
不適切な取引や節税目的のみの設立は税務当局から否認される可能性があります。実態のある業務委託と適正な対価の設定が重要です。
偽装請負の問題にも注意が必要です。MS法人が業務委託を受ける場合、医療機関からMS法人の労働者に直接指示を出すことは禁止されています。派遣会社の登録を受けていない状況で実質的に医療法人から業務指示を受けている実態があると、違法行為となります(労働者派遣法違反)。
消費税負担の増加も考慮すべきポイントです。医療機関の収入は消費税非課税の診療報酬が大半であるため、MS法人との取引が増加すると「損税」が発生する可能性があります。
設立・運営コストとして、法人設立費用、税務申告費用、法人住民税の均等割などが発生します。十分な資金計画と費用対効果の検討が必要です。
MS法人へ委託する業務の具体例
MS法人に委託できる業務は多岐にわたりますが、医療行為以外の業務に限定されます。
事務関連業務として、レセプト業務・会計業務・受付業務・医療事務・経理事務・経営コンサルティング業務などがあります。これらの業務委託により、クリニックにとっては経費として計上でき、MS法人にとっては業務委託料収入となります。
物品関連業務では、医薬品・医療機器・衛生消耗品などの仕入れ・管理・販売業務があります。眼科でのコンタクトレンズ販売、皮膚科での化粧品製造・販売などが代表例です。
設備・施設関連業務として、医療機器のリース業務・建物や駐車場の賃貸業務・清掃業務・警備業務・給食業務・売店運営などがあります。
人材関連業務では、人材派遣業務がありますが、この場合は適切な派遣業許可の取得が必要です。
その他の業務として、広告宣伝業務・システム開発・保守業務・各種コンサルティング業務なども委託可能です。
これらの業務を適切に分離し、実態のある業務委託契約を締結することで、効果的な節税効果と業務効率化を両立することができます。ただし、業務内容によっては医薬品卸売販売業許可や管理医療機器販売業許可などの許認可が必要な場合があるため、事前の確認が重要です。
4.ライフステージに合わせた税務をカバーしている
開業医のキャリアは長期にわたり、各ライフステージで異なる税務課題が発生します。「勤務医→個人開業→医療法人化→事業承継→リタイア後の生活」という一般的な流れに沿って、継続的にサポートできる税理士を選ぶことが重要です。
開業準備期から初期経営期のサポート
開業前の資金計画から開業後の経営安定期まで、税理士の継続的なサポートが必要です。開業直後は「資金繰りがうまく回るか」「帳簿をどう付ければいいか」「税金はいつ、いくら納めるのか」といった不安が多くつきまといます。開業医として独立すると、医師であると同時に経営者でもあるため、診療業務に加えて経営管理にも取り組む必要がありますが、税理士は頼りになる伴走者となります。
成長期から安定期の対応
医院経営が軌道に乗る成長期から安定期に移行した際には、医療法人化の検討や設備投資の最適化など、税務面でのサポートに加え、外部専門家によるマーケティング戦略や広告戦略の導入が重要になります。税理士はこれらの施策そのものを担うわけではありませんが、
- 広告費やプロモーション予算の適正性を見極める。
- 投資対効果を数値で分析する。
- 施策の成果が税務面や資金繰りに及ぼす影響を丁寧に検証する。
といったことを通して、専門家と連携した戦略が過剰投資にならないようブレーキ役を果たします。外部の広告会社やコンサルティング会社と連携する際にも、税理士が予算配分や支出状況を一元管理し、ROI(投資対効果)の確認を行うことで、無理のない成長計画を支援します。これにより、医院経営の安定的な発展を財務面から強力にバックアップできます。
事業承継・相続対策
1. 個人資産(事業用資産を除く)
生前贈与の活用は最も基本的な相続対策です。暦年課税制度を利用し、年間110万円の基礎控除を活用した計画的な贈与により、相続財産の圧縮を図ることができます。ただし、毎年適切な贈与契約書を作成し、金銭の授受を通帳等で確認できるようにしておくことが重要です。
生命保険の活用では、相続時に法定相続人1人あたり500万円の非課税枠が適用されるため、効果的な相続税軽減策となります。また、生前贈与機能付き生命保険を活用することで、毎年110万円以下の生存給付金を非課税で受け取りながら、相続財産の圧縮を図ることも可能です。
相続時精算課税制度の活用により、2,500万円までの特別控除を利用した大型贈与が可能です。将来値上がりが予想される資産については、早期に移転することで相続税の軽減効果が期待できます。
2. 事業用資産
医院の事業用資産については、持分なし医療法人の設立が最も効果的な相続対策となります。
事業用資産を適正価格で医療法人に譲渡することで、個人から法人への資産移転が実現し、相続税の課税対象から除外されます。持分なし医療法人には出資持分という概念がないため、相続時に出資持分に対する相続税が課税されることはありません。
譲渡時の税負担については、適正価格での譲渡であれば譲渡益が発生せず、譲渡所得税の負担はありません。
注意点として、事業用資産の適正価額の算定が重要です。時価と乖離した価格での譲渡は、低額譲渡として課税関係が生じる可能性があります。また、医療法人設立には都道府県知事の認可が必要であり、設立要件を満たすための資金や設備の確保が求められます。
このように、相続対策も意識しつつ事業承継対策を適切に実施するには、医療法人制度、譲渡所得税、相続税・贈与税等に精通した税理士が不可欠です。医療法人設立の認可要件、持分なし医療法人への移行手続き、認定医療法人制度の活用など、複雑な制度を適切に組み合わせた最適な承継スキームの提案ができる専門性の高い税理士を選ぶことが成功の鍵となります。
リタイア後の生活設計
開業医のリタイア後は、勤務医と異なり厚生年金などの保障が限定的です。そのため、現役時代からの計画的な資産形成と退職後の税務対策が重要となります。
小規模企業共済による退職金の準備、個人年金保険の活用、不動産投資による安定収入の確保など、リタイア後の生活を見据えた総合的な提案ができる税理士を選ぶことで、安心して老後を迎えることができるでしょう。
5. 税務調査に強い
税務調査は開業医にとって避けて通れない重要な問題です。医療機関特有の税務論点を理解し、税務調査に豊富な経験を持つ税理士を選ぶことで、調査時の不安を軽減し、適切な対応を図ることができます。
開業医の税務調査の特徴
医療機関の税務調査では、一般的に2~3日間で実施され、1~2名の調査官が過去3年分を対象として調査を行います。個人医院、医療法人を問わず、おおむね3~5年の周期で税務調査が入ることが多いのが実情です。
税務調査の対象となりやすいケースとしては、毎年多額の所得が発生している、業績が急激に伸びている、前期と比較し売上や経費が大きく増減している、他の同規模クリニックと比べ利益率が低い場合や特定の経費が多い場合などが挙げられます。
医療機関税務調査の重点項目
開業医の税務調査では、特に以下の3点が重点的に調査されます。
収益計上漏れ
診療した時点で収益に計上する必要があるため、12月31日を跨いだ未収入金の適切な計上が求められます。クレジットカードによる診療、市区町村からの委託診療、各種補助金・助成金の計上漏れ等に注意が必要です。
クリニック特有の論点として、未収入金の取り扱いに特に注意が必要です。社保・国保の収入がメインとなる医療機関では、保険給付の支払まで2か月の期間が生じるため、保険未収金の適切な計上が税務調査の重要なポイントとなります。
患者負担分についても。診療を行った時点で収入計上する必要があるため、患者が後日代金を持参した日ではなく、診療を行った日に収入計上しなければなりません。
在庫計上漏れ
在庫の計上漏れについては、医薬品や医療材料の期末在庫を実際と異なる金額で計上すると利益操作となる可能性があり、12月31日付近で仕入れた高額な医薬品や検査キットの在庫リスト記載漏れが問題となることが度々あります。
その他
飲食費やゴルフプレー代金、お中元などの支出が私的な経費として判断されるリスクがあります。接待交際費として認められるためには、税法に則った要件を満たしていることの記録・説明が重要であり、日頃の心がけとしては、領収書の余白に目的や相手先を記載しておくことが必要となってきます。
「書面添付制度」を活用で税務調査リスクを低減
書面添付制度とは、税理士法第33条の2に規定される制度で、税理士または税理士法人が申告書を作成した際に、その申告書の作成に関して計算し、整理し、または相談に応じた事項を記載した書面を申告書に添付することができる制度です(税理士法第33条の2)。
書面添付制度で添付される書面には、税理士が専門家としてどのような作業を実施したかを具体的に記載します。主な記載内容は以下の通りです。
- 提示を受けた帳簿書類に関する事項
- 自ら作成記入した帳簿書類に関する事項
- 計算し、整理した事項(今期大きく増減した科目の原因及び理由)
- 相談に応じた事項(関与先からどのような税務相談を受け、どう回答したか)
税務職員は調査の通知前に、税務代理権限証書を提出している税理士に対し、添付書面に記載された事項に関する意見を述べる機会を与えなければなりません(税理士法第35条)。
この結果、意見聴取により税務調査が省略される可能性もあります。
書面添付制度を活用することを前提に、積極的に日々の指導・助言を行ってくれる税理士を選ぶことが重要でしょう。
税務調査立ち会いの重要性
税務調査時には、顧問税理士の立ち会いが極めて重要です。税理士に立ち会いを依頼する際の費用相場は30~70万円程度ですが、「書面添付制度」の活用や、調査官との適切な対応により、結果的に時間と費用の節約につながります。
税務調査で指摘を受け納税額が増える場合、延滞税や加算税といった追加の税金が発生するため、医療に詳しい税理士を顧問にすることで、こうしたリスクを最小限に抑えることができます。
6. 気軽に相談できる
ここまで、専門的な内容をご説明してきましたが、「気軽に相談できる」というソフトな内容ももちろん重要です。開業医の日常業務では、税務や経営に関する疑問や課題が頻繁に発生します。そのため、気軽に相談できる税理士を選ぶことは、ストレスなく医院を経営していくために極めて重要です。
レスポンスの速さ
レスポンスの速さは税理士選びの判断基準です。問い合わせに対して迅速に回答してくれる税理士であれば、日々の業務で生じる疑問を素早く解決でき、適切な経営判断につなげることができます。
電話やメールでの問い合わせへの返答速度、より気軽なチャット等での問い合わせの可否、面談の設定しやすさ、緊急時の対応体制などを事前に確認しておくことが重要です。
コミュニケーション能力
税理士には高度な専門知識だけでなく、それを分かりやすく説明する能力が求められます。医療の専門家である開業医に対して、税務や経営の複雑な内容を平易に説明し、適切なアドバイスを提供できる税理士を選ぶことが大切です。
また、開業医の立場や医院の状況を理解し、医師の視点に立ったアドバイスを提供できる税理士であれば、より実践的で有効な提案を受けることができるでしょう。
7. 料金体系がわかりやすい
税理士との顧問契約において、料金体系の明確さは非常に重要です。不透明な料金設定は後々のトラブルの原因となるため、事前にしっかりと確認しておく必要があります。
顧問料の相場
開業医の税理士顧問料の相場は、月額3万円~5万円程度が一般的ではないかと思います。売上規模に応じて以下のような料金設定が多く見られます。
- 年間売上高1億円以下:月額3万円~5万円
- 年間売上高1億円~3億円:月額4万円~6万円
- 年間売上高3億円~5億円:月額5万円~8万円
- 年間売上高5億円超:月額6万5千円~
料金に含まれるサービス内容
税理士によって顧問料に含まれる業務範囲が大きく異なるため、契約前に詳細を確認することが重要です。
オプション扱いになることが多いサービスの例
- 記帳代行・月次試算表の作成(月額料金に含まれない場合が多い)
- 年末調整・源泉徴収票の作成
- 給与計算
- 社会保険手続き
- 税務調査立ち会い
- 医療法人設立支援
追加料金の明確化
基本料金以外に発生する可能性のある追加料金についても、事前に確認しておくことが重要です。
月々の顧問報酬以外に発生する料金の例
- 所得税/法人税確定申告書作成報酬(決算料):毎月の顧問報酬とは別に、年1回の決算時に発生する料金
- 税務調査立会報酬:税務調査の立会や準備を行う場合に、時間単位、半日単位、1日単位等で発生する費用
料金体系の透明性
見積もりを依頼する際は、「年額でいくらになるのか」を明確に把握し、想定される追加料金も含めた総額で比較することが重要です。
月々の金額だけで比較すると、含まれていない料金が存在する可能性があります。
まとめ
西原会計事務所が今回「顧問税理士の選び方」をまとめたのは、開業医の皆様に対し、税務・経営・ライフステージの各観点から本当に役立つサービスを提供したいという想いからです。専門性の高い税務論点への対応力、医療法人化・MS法人設立に関する豊富な知見、ライフステージを見据えた長期的支援、税務調査に強い実績、安心して何でも相談できるコミュニケーション、明快な料金体系、さらに金融機関との折衝力——これらの価値観を余すところなく盛り込みました。医院経営のパートナーとして最適な顧問税理士をお探しの際には、ぜひ西原会計事務所までお気軽にお問い合わせください。豊富な経験と専門知識で、開業医の皆様の成功を全力でサポートいたします。